こんにちは、管理人のdoggoです
大切な家族の一員である愛犬がシニア期を迎え、以前よりも明らかに水を飲む量が増えた、と感じることはありませんか。
暑い日でもないのに、常に水を求めている姿を見ると、飼い主としては心配になるのは当然のことです。
老犬が水をよく飲むという行動は、単なる老化現象の一つとして片付けられることもありますが、その背後には多飲多尿という症状が隠れていることが少なくありません。
この変化には、腎臓病や糖尿病、クッシング症候群といった、見過ごすことのできない重大な病気のサインである可能性が潜んでいます。
もちろん、原因がストレスや食事内容の変化である場合もありますが、自己判断は禁物です。
まずは愛犬の飲水量を正確にチェックし、正常な量を知ることが対策の第一歩となります。
この記事では、老犬が水をよく飲む場合に考えられる様々な原因を深掘りし、飼い主様がご自宅でできる具体的なチェック方法から、どのような症状が見られたら病院へ行くべきか、そして代表的な病気の治療法まで、網羅的に解説していきます。
愛犬からの小さなサインを見逃さず、適切な対処法を知ることが、穏やかなシニアライフを守るための鍵となるでしょう。
◆このサイトでわかる事◆
- 老犬が水をたくさん飲む生理的な理由と病的な理由の違い
- 自宅で簡単にできる1日の正常な飲水量のチェック方法
- 多飲多尿を引き起こす可能性のある代表的な病気リスト
- ストレスが原因で水をよく飲む「心因性多飲」について
- すぐに動物病院へ連れて行くべき危険な症状のサイン
- 腎臓病や糖尿病と診断された場合の食事管理のポイント
- 飼い主が日々行うべき健康観察と具体的なケアの方法

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老犬が水をよく飲むのは病気のサイン?考えられる原因とは
◆この章のポイント◆
- 多飲多尿はなぜ起こるのか?そのメカニズム
- 老化による生理的な変化と病気の見分け方
- 飲水量の簡単なチェック方法と正常な量
- ストレスが原因で飲水量が増えるケース
- 放置は危険!考えられる代表的な病気リスト
多飲多尿はなぜ起こるのか?そのメカニズム
愛犬が水を飲む量が増えたと感じるとき、獣医学的には「多飲」と「多尿」という二つの状態をセットで考えることがほとんどです。
つまり、「水をたくさん飲む(多飲)」と「尿をたくさんする(多尿)」は、多くの場合、表裏一体の関係にあります。
この体のメカニズムを理解することが、なぜ老犬が水をよく飲むのかという疑問を解く鍵となります。
健康な犬の体内では、水分バランスは非常に精密にコントロールされています。
その中心的な役割を担っているのが、脳の下垂体から分泌される「抗利尿ホルモン(ADH)」です。
このホルモンは、その名の通り「尿に抗う」、つまり尿の量を減らす働きをします。
具体的には、腎臓にある尿細管という部分に作用し、一度ろ過された尿の中から水分を再吸収して体内に戻すよう指令を出します。
これにより、体は必要な水分を保持し、濃縮された少量の尿を排出することができるのです。
しかし、このシステムに異常が生じると、多飲多尿が起こります。
原因のパターンは大きく分けて2つあります。
1. 尿が止めどなく出てしまう「多尿」が先に来るケース
こちらが多飲多尿の多くの原因を占めます。
何らかの理由で腎臓が尿を濃縮できなくなり、薄い尿が大量に作られてしまう状態です。
すると、体はどんどん水分を失い、脱水状態に陥ってしまいます。
この脱水を補うために、脳が「喉が渇いた」という指令を出し、犬は必死に水を飲もうとします。
この場合の「多飲」は、生命を維持するための代償行動(埋め合わせ行動)なのです。
慢性腎臓病、糖尿病、クッシング症候群、子宮蓄膿症など、多くの病気がこのパターンの多尿を引き起こします。
2. 水を飲むのが止められない「多飲」が先に来るケース
こちらは比較的稀なケースです。
脳の視床下部にある渇中枢(喉の渇きを感じる部分)に異常が起きたり、精神的なストレスが原因で水を飲む行動が止められなくなったりする「心因性多飲」などがこれにあたります。
この場合、体は必要以上の水分を摂取してしまうため、過剰な水分を排出しようとして結果的に「多尿」になります。
どちらのパターンであれ、体内の水分調節機能に何らかの重大なトラブルが起きているサインであることに変わりはありません。
愛犬が水を飲む量だけでなく、尿の量や回数、色(薄くなっていないか)なども併せて観察することが、原因を探る上で非常に重要なヒントとなります。
老化による生理的な変化と病気の見分け方
シニア期に入った愛犬の飲水量が増えたとき、多くの飼い主様が「もう年だから仕方ないのかな」と考えがちです。
確かに、加齢に伴う生理的な変化が原因であることもありますが、それを病気のサインと見分けることは愛犬の健康寿命を延ばすために極めて重要です。
老化による生理的な変化
犬も人間と同じく、年を重ねると体の様々な機能が少しずつ衰えてきます。
特に腎臓は、加齢の影響を受けやすい臓器の一つです。
若い頃に比べて、腎臓の糸球体(血液をろ過するフィルター)の数が減少し、尿を濃縮する能力が自然と低下してきます。
その結果、以前より薄い尿をたくさんするようになり、失われた水分を補うために飲む水の量が増える、という緩やかな変化が見られることがあります。
これは、ある意味で生理的な老化の範囲内と捉えることもできます。
しかし、この生理的な腎機能の低下と、治療が必要な「慢性腎臓病」との境界線は非常に曖昧であり、飼い主の判断だけで「老化だから大丈夫」と結論づけるのは危険です。
病気との見分け方:5つのチェックポイント
では、単なる老化現象と病的な状態をどのように見分ければよいのでしょうか。
ポイントは、「飲水量以外の変化」と「変化のスピード」に注目することです。
- 1. 変化のスピードはどうか?:老化による変化は、通常、数ヶ月から数年という長いスパンで非常にゆっくりと進行します。もし、「ここ数週間で急に飲む量が増えた」「日に日に量が増えている」と感じる場合は、病気の可能性が高いと考えられます。
- 2. 食欲に変化はないか?:老化現象であれば、食欲は比較的安定していることが多いです。一方で、病気が原因の場合、食欲が全くなくなったり、逆に異常なほどガツガツ食べたりする(糖尿病やクッシング症候群など)といった変化が見られます。
- 3. 体重は減っていないか?:食欲があるにもかかわらず体重が減少している場合は、糖尿病の典型的な症状です。また、食欲不振に伴う体重減少は、腎臓病の進行など、様々な病気でみられる重要なサインです。
- 4. 元気や活動量はどうか?:散歩に行きたがらない、ぐったりして寝てばかりいる、大好きなおもちゃに興味を示さないなど、活動性の低下が見られる場合は、体が何らかの不調を訴えている証拠です。
- 5. その他の症状はないか?:嘔吐、下痢、咳、お腹の張り、皮膚のトラブル(脱毛、フケ)、口臭の変化など、多飲以外の症状が一つでもあれば、それは病気のサインである可能性が濃厚です。
これらのポイントを総合的に観察し、「いつもと違う」と感じることがあれば、それは年のせいではなく、病気のサインかもしれません。
早期発見のためには、飼い主様の注意深い観察眼が何よりも大切です。
飲水量の簡単なチェック方法と正常な量
「最近、愛犬が水をよく飲む気がする」と感じたら、まず最初に行うべきことは、その感覚を客観的な数値で確認することです。
正確な飲水量を把握することは、それが正常範囲内なのか、あるいは病的な多飲なのかを判断する上で不可欠なステップであり、獣医師に相談する際にも極めて重要な情報となります。
家庭でできる!24時間飲水量の測定方法
飲水量の測定は、特別な道具がなくても家庭で簡単に行うことができます。
以下の手順で、できれば2~3日間続けて測定し、平均値を出してみましょう。
1. 準備するもの:計量カップ、給水器、メモ
2. 測定開始:朝、決まった時間に、計量カップで正確に測った水(例えば1000ml)を給水器に入れます。この時、開始時間と入れた水の量をメモしておきます。
3. 途中での追加:もし24時間の間に水がなくなりそうになったら、追加した水の量も正確に測ってメモしておきます。
4. 測定終了:24時間後の同じ時間に、給水器に残っている水の量を計量カップで正確に測ります。
5. 計算方法:(最初に入れた水の量 + 途中で追加した水の量)- 最後に残っていた水の量 = 24時間の総飲水量
多頭飼いの場合は、それぞれの犬を別々の部屋に隔離して測定する必要があります。
少し手間はかかりますが、どの犬に問題があるのかを特定するために必ず行いましょう。
正常な飲水量と多飲の境界線
犬の健康維持に必要とされる1日の水分量は、一般的に体重1kgあたり約50ml~60mlと言われています。
ただし、これはあくまで目安です。
食事内容(ドライフードは水分が少ないため飲水量が増え、ウェットフードはその逆)、気温、運動量などによって変動します。
一方で、病的な「多飲」と判断される基準は、体重1kgあたり100ml以上です。
このラインを継続的に超えている場合は、体に何らかの異常が起きている可能性が高いと考えられます。
例えば、体重が8kgの犬であれば、1日の飲水量が800mlを超えている状態が続けば、それは明らかに異常な状態です。
以下の表を参考に、愛犬の飲水量をチェックしてみてください。
| 犬の体重 | 正常な飲水量の目安(1日) | 多飲を強く疑うライン(1日) |
|---|---|---|
| 3kg | 150ml ~ 180ml | 300ml 以上 |
| 5kg | 250ml ~ 300ml | 500ml 以上 |
| 8kg | 400ml ~ 480ml | 800ml 以上 |
| 10kg | 500ml ~ 600ml | 1000ml 以上 |
| 15kg | 750ml ~ 900ml | 1500ml 以上 |
この数値を大幅に超えるようであれば、測定した記録を持って、できるだけ早く動物病院を受診しましょう。
ストレスが原因で飲水量が増えるケース
老犬が水をよく飲む原因は、身体的な病気だけではありません。
見過ごされがちですが、精神的なストレスが引き金となり、水を飲む行動が止められなくなる「心因性多飲」という状態も存在します。
これは、犬が感じる不安や恐怖、退屈といったネガティブな感情を紛らわせるために、水を飲むという特定の行動に依存してしまう、一種の強迫行動です。
人間がストレスを感じると爪を噛んだり、貧乏ゆすりをしたりするのと似たようなメカニズムと言えるでしょう。
老犬がストレスを感じやすい状況
シニア期に入った犬は、若い頃よりも環境の変化や刺激に対して敏感になりがちです。
以下のような状況は、老犬にとって大きなストレス源となり得ます。
- 環境の大きな変化:引っ越し、家のリフォーム、家族構成の変化(赤ちゃんの誕生、新しいペットを迎える、家族との死別など)。
- 生活リズムの変化:飼い主の転職や転勤による留守番時間の増加、散歩の時間の変更など。
- 刺激不足と退屈:加齢により散歩の距離が短くなったり、遊ぶ時間が減ったりして、日中の活動量が極端に低下している。
- 分離不安:飼い主への依存心が強く、少しでも離れると強い不安を感じてしまう。
- 身体的な不快感:関節炎などの慢性的な痛み、視力や聴力の低下による不安感なども、精神的なストレスにつながります。
心因性多飲の見分け方と注意点
心因性多飲は、身体的な病気による多飲とは少し異なる特徴を示すことがあります。
例えば、飼い主がそばにいて安心している時はそれほど水を飲まないのに、留守番中や夜間など、特定の状況下で集中的に大量の水を飲む、といった行動が見られることがあります。
また、水を飲む以外にも、自分の尻尾をぐるぐる追いかける、足先を舐め続けるといった他の常同行動を併発している場合もあります。
しかし、ここで最も重要な注意点があります。
それは、「ストレスが原因だろう」と飼い主が自己判断し、動物病院の受診を遅らせてはならない、ということです。
多飲を引き起こす病気の多くは、放置すれば命に関わる深刻なものです。
心因性多飲は、あくまで「診断的除外」によって判断されます。
つまり、血液検査、尿検査、レントゲン検査、超音波検査など、あらゆる検査を行って身体的な病気の可能性をすべて否定できた場合に、初めて「精神的な問題が原因かもしれない」と考えることができるのです。
もし、最終的に心因性多飲と診断された場合は、その原因となっているストレスを特定し、生活環境の改善や行動学的アプローチによって対処していくことになります。
放置は危険!考えられる代表的な病気リスト
老犬が水をよく飲むという症状は、決して軽視してはいけない体からのSOSサインです。
その背景には、ゆっくりと進行している慢性的な病気から、一刻を争う緊急的な病気まで、様々な可能性が考えられます。
ここでは、多飲多尿を主症状とする代表的な病気をリストアップします。
1. 慢性腎臓病
老犬の多飲多尿で最も頻繁に遭遇する病気です。
加齢などにより腎臓の機能が徐々に失われ、血液中の老廃物をろ過したり、尿を濃縮して水分を再吸収したりする能力が低下します。
体が水分を保持できなくなり薄い尿を大量に排泄するため、代償的に大量の水を飲みます。
初期は多飲多尿以外に目立った症状がないため見過ごされがちですが、進行すると食欲不振、嘔吐、体重減少、貧血、口臭(アンモニア臭)などが見られます。
2. 糖尿病
血糖値を下げるインスリンというホルモンの作用不足によって、血液中の糖分濃度(血糖値)が高い状態が続く病気です。
体は過剰な糖を尿と一緒に排出しようとしますが、その際に大量の水分も一緒に失われるため、強い脱水と喉の渇きが起こります。
「たくさん食べるのに痩せていく」というのが、多飲多尿と並ぶ典型的な症状です。
治療せずに放置すると、ケトアシドーシスという命に関わる危険な状態に陥ることがあります。
3. 副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)
副腎から「コルチゾール」というステロイドホルモンが過剰に分泌される病気で、これも老犬に多く見られます。
コルチゾールは抗利尿ホルモンの働きを阻害するため、腎臓での水分再吸収がうまくいかなくなり、多飲多尿を引き起こします。
その他、異常な食欲、お腹がぽっこり膨れる(腹部膨満)、左右対称性の脱毛、皮膚が薄くなる、筋肉が落ちるなどの特徴的な症状を示します。
4. 子宮蓄膿症
これは、避妊手術をしていない高齢のメス犬にのみ起こる、緊急性の高い病気です。
子宮内に細菌が感染して膿が溜まり、その細菌が出す毒素が全身に回ります。
この毒素が腎臓にダメージを与え、多飲多尿を引き起こすのです。
元気消失、食欲不振、嘔吐、発熱などを伴い、陰部から膿が出ていることもあります。
発見が遅れると命を落とす危険性が非常に高い病気です。
この他にも、肝臓病、甲状腺機能低下症、高カルシウム血症、尿崩症など、多飲多尿を症状とする病気は数多く存在します。
いずれも早期発見・早期治療が鍵となります。
愛犬の飲水量に異常を感じたら、これらの病気の可能性を念頭に置き、速やかに獣医師の診察を受けましょう。
老犬が水をよく飲むことに気づいた時の具体的な対策
◆この章のポイント◆
- まずは動物病院へ行くべき症状のポイント
- 腎臓病や糖尿病が疑われる場合の食事管理
- クッシング症候群の治療法と注意点
- 飼い主ができる日々の健康観察とケア
- まとめ:老犬が水をよく飲む変化を見逃さないで
まずは動物病院へ行くべき症状のポイント
愛犬の飲水量が異常に多いことに気づいたら、飼い主として取るべき最初の、そして最も重要な行動は「動物病院を受診する」ことです。
様子を見ている間に病気が進行してしまうケースも少なくありません。
特に、多飲に加えて以下のような症状が見られる場合は、緊急性が高い可能性があります。
迷わず、できるだけ早く獣医師の診察を受けてください。
緊急受診を推奨する症状リスト
- ぐったりして全く元気がない、起き上がれない
- 食欲が全くなく、水も飲まない
- 一日に何度も嘔吐や下痢を繰り返している
- 呼吸が速い、浅い、苦しそうにしている
- お腹がパンパンに張っていて、触ると痛がる
- 呼びかけへの反応が鈍い、意識が朦朧としている
- (避妊していないメスの場合)陰部から膿のようなものが出ている
これらの症状がなくても、前述したように、体重1kgあたり100mlを超える飲水が数日間続いている場合は、病気が隠れている可能性を考えて受診しましょう。
受診前に準備しておくと良いこと
診察をよりスムーズかつ正確に進めるために、事前にいくつかの情報を整理しておくと非常に役立ちます。
獣医師は、飼い主からの詳細な情報提供を求めています。
1. 24時間の正確な飲水量:測定した具体的な数値をメモしていきます。「コップ何杯分」といった曖昧な表現ではなく、「〇〇ml」と伝えられるようにしましょう。
2. 尿の情報:可能であれば、自宅で採尿した新鮮な尿を持参しましょう。ペットシーツを裏返して使う、お玉で受けるなどの方法があります。尿の色、量、回数の変化、排尿時に力む、時間がかかるなどの様子も重要な情報です。
3. 症状の時系列メモ:「いつから」水をよく飲むようになったか、「どのような」他の症状が「いつから」見られるようになったか、といった情報を時系列でまとめておくと、診断の大きな助けになります。
4. 食事内容と生活の変化:与えているフードの種類、量、おやつの内容を正確に伝えます。また、最近引っ越しや家族構成の変化など、生活環境に変わったことがあればそれも伝えましょう。
「こんなことまで話す必要はないだろう」と飼い主が思うような些細な情報が、診断の決め手になることもあります。
心配なこと、気になることはすべて獣医師に伝えるようにしてください。
腎臓病や糖尿病が疑われる場合の食事管理
動物病院での検査の結果、老犬が水をよく飲む原因が慢性腎臓病や糖尿病であると診断された場合、薬物治療と並行して、食事管理が治療の非常に重要な柱となります。
これらの病気は完治を目指すものではなく、病気の進行をコントロールし、犬のQOL(生活の質)をいかに高く維持するか、という付き合い方になります。
食事管理は必ず獣医師の指導のもとで行う必要がありますが、ここではその基本的な考え方を解説します。
慢性腎臓病の食事管理
目的は、残された腎臓の機能にできるだけ負担をかけず、長持ちさせることです。
そのために、栄養素を厳密に調整した「腎臓病用療法食」への切り替えが推奨されます。
- タンパク質の制限:タンパク質の代謝によって生じる尿素などの老廃物は、腎臓から排泄されます。腎機能が低下するとこれらが体内に溜まり、尿毒症を引き起こすため、タンパク質の摂取量を制限します。ただし、質は高いものが必要です。
- リンの制限:リンは腎臓病を進行させる最も重要な因子の一つと考えられています。食事中のリンを制限することが、腎機能の維持に極めて効果的であることが証明されています。
- ナトリウムの制限:高血圧は腎臓にさらなるダメージを与えます。ナトリウム(塩分)を控えることで、血圧をコントロールし、腎臓を保護します。
- オメガ3脂肪酸の強化:EPAやDHAなどのオメガ3脂肪酸は、腎臓の炎症を抑え、血流を改善する効果が期待されます。
糖尿病の食事管理
目的は、食後の血糖値の乱高下を防ぎ、一日を通して安定させることです。
インスリン治療を行っている場合は、その効果を最大限に引き出すためにも食事が重要になります。
1. 理想体重の維持:肥満はインスリンの効きを悪くする最大の敵です。まずは適切なカロリー設定で、理想的な体重を目指し、維持することが治療の基本となります。
2. 高食物繊維・低脂肪:食物繊維、特に水溶性食物繊維は、腸からの糖の吸収を穏やかにし、食後の急激な血糖値上昇を抑えます。また、低脂肪食は体重管理に役立ちます。
3. 炭水化物の調整:糖質の種類と量を管理します。一般的に、血糖値を急上昇させにくい複合炭水化物(大麦など)を使用した「糖尿病用療法食」が用いられます。
4. 厳格な食事時間と量:
毎日、決まった時間に、決まった量を食べさせることが血糖値の安定に不可欠です。
インスリン注射をしている場合は、食事と注射のタイミングを厳密に合わせる必要があります。おやつの与え方なども獣医師の指示を必ず守りましょう。
療法食は犬の嗜好に合わないこともありますが、諦めずにウェットタイプを試したり、少し温めたりするなどの工夫も必要です。
クッシング症候群の治療法と注意点
老犬が水をよく飲む原因の一つである副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)は、ホルモンの異常によって引き起こされる病気です。
治療の目的は、過剰に分泌されているコルチゾールというホルモンを正常なレベルまで抑制し、それによって引き起こされる様々な症状を改善することです。
治療は生涯にわたることがほとんどで、飼い主の深い理解と協力が不可欠となります。
主な治療法:内科的治療(投薬)
クッシング症候群の大部分(約85%)は、脳の下垂体の腫瘍が原因で副腎を過剰に刺激する「下垂体性」と呼ばれるタイプです。
このタイプの治療の第一選択は、内科的治療となります。
現在、最も一般的に使用されている薬は「トリロスタン」です。
この薬は、副腎におけるコルチゾールの合成を直接阻害する作用を持ちます。
1日1回または2回の経口投与で、血中のコルチゾール濃度をコントロールします。
薬が適切に作用すれば、治療開始後、比較的速やかに多飲多尿や異常な食欲といった症状の改善が見られます。
しかし、脱毛した毛が再生したり、たるんだお腹が引き締まったりといった外見上の変化には、数ヶ月以上の時間が必要です。
薬の適切な投与量は犬によって大きく異なるため、治療中は定期的な血液検査(ACTH刺激試験)でホルモン値をモニタリングし、薬の量を細かく調整していく必要があります。
治療における最大の注意点:副作用
クッシング症候群の治療は、ホルモンを人為的にコントロールするため、常に副作用のリスクを伴います。
最大の注意点は、薬が効きすぎてしまい、逆にコルチゾールが不足した状態、すなわち「医原性アジソン病(副腎皮質機能低下症)」を引き起こしてしまうことです。
この状態は、食欲不振、元気消失、嘔吐、下痢といった症状で現れ、重篤な場合はショック状態に陥り、命に関わることもあります。
もし、治療中に愛犬の元気がなくなったり、ご飯を食べなくなったりした場合は、直ちにその日の投薬を中止し、すぐに動物病院に連絡してください。
この副作用のサインを見逃さないために、治療中は飼い主による日々の注意深い観察が何よりも重要になります。
また、症状が改善したからといって、自己判断で薬の量を減らしたり、投薬を中断したりすることは絶対に避けてください。
クッシング症候群は、獣医師と飼い主が二人三脚で、根気強くコントロールしていく病気なのです。
飼い主ができる日々の健康観察とケア
愛犬がシニア期を迎え、水をよく飲むなどの変化が見られたら、それはこれまで以上にきめ細やかな健康管理が必要になるというサインです。
動物病院での治療はもちろん重要ですが、それと同じくらい、日々の生活における飼い主様の観察とケアが、愛犬のQOL(生活の質)を大きく左右します。
「健康日誌」をつける習慣
日々の小さな変化を見逃さないために、簡単な「健康日誌」をつけることを強くお勧めします。
毎日記録することで、変化のパターンや異常の早期発見につながり、獣医師への情報提供も的確に行えます。
- 飲水量:毎日測定し、グラフなどにすると変化が分かりやすいです。
- 食事量と内容:「いつもの量を完食」「半分残した」など具体的に記録します。
- 尿と便の状態:回数、色、量、硬さなどをチェックします。ペットシーツはこまめに取り替え、その都度確認しましょう。
- 体重:週に1回など、定期的に測定します。わずかな増減も重要な情報です。
- 活動量と様子:散歩時の歩き方、睡眠時間、呼吸の様子、その他気になる行動(咳、痒みなど)をメモします。
生活環境のケア
多飲多尿の状態にある犬は、トイレの回数が必然的に増えます。
粗相が増えるかもしれませんが、これは犬が我慢できないだけであり、決してわざとではありません。
叱ることはせず、むしろ安心して排泄できる環境を整えてあげましょう。
トイレの数を増やしたり、寝床の近くにもペットシーツを敷いたりするなどの配慮が必要です。
また、いつでも新鮮な水が飲めるように、水の器は複数箇所に設置し、常に清潔に保ちましょう。
ここで改めて強調したいのは、
水をたくさん飲むからといって、飼い主の判断で給水を制限することは絶対にしてはいけない、ということです。
体が脱水を防ぐために必要としている水分を制限すると、腎臓などに深刻なダメージを与え、命を危険に晒すことになります。
心と体のケア
シニア犬は不安を感じやすくなっています。
優しく声をかけながら体を撫でてあげるスキンシップは、犬を安心させるだけでなく、体を触ることでしこりや痛みの有無、皮膚の状態などをチェックする絶好の機会にもなります。
無理のない範囲で、散歩や室内での遊びを取り入れ、心と体に良い刺激を与えてあげることも大切です。
日々の丁寧なケアは、病気と闘う愛犬にとって大きな支えとなります。
まとめ:老犬が水をよく飲む変化を見逃さないで
本記事を通じて、老犬が水をよく飲むという一見些細な変化が、いかに多くの情報を含んだ重要なサインであるかをご理解いただけたかと思います。
この行動は、単なる加齢による生理現象であることもありますが、その裏には慢性腎臓病、糖尿病、クッシング症候群といった、早期の対応が求められる病気が隠れている可能性が常にあります。
飼い主様がまず実践すべきことは、冷静な現状把握です。
感覚に頼るのではなく、計量カップを用いて1日の飲水量を正確に測定し、それが体重1kgあたり100mlを超える異常なレベルでないかを確認してください。
そして、飲水量だけでなく、食欲、元気、体重、排泄の状態など、愛犬の全身状態を注意深く観察し、記録する習慣をつけることが大切です。
もし、測定した飲水量が多い場合や、多飲以外の症状が少しでも見られる場合は、「年のせいだから」と様子を見るのではなく、速やかに動物病院を受診してください。
その際、記録した健康日誌は、獣医師が診断を下す上でこの上なく貴重な情報源となります。
たとえ病気が見つかったとしても、現代の獣医療では、適切な治療と食事管理、そして何よりも飼い主様の日々のケアによって、多くの病気と長く上手に付き合っていくことが可能です。
老犬が水をよく飲むという変化は、言葉を話すことができない愛犬が、その体をもって私たちに送る精一杯のメッセージです。
この重要なサインを見逃さず、愛情を持って迅速に対応することこそが、愛するパートナーの健やかで幸せなシニアライフを守るための、私たち飼い主ができる最善の行動と言えるでしょう。
本日のまとめ
- 老犬が水をよく飲むのは「多飲多尿」という症状のことが多い
- 原因は生理的な老化から深刻な病気まで様々
- まずは24時間の飲水量を正確に測定することが第一歩
- 体重1kgあたり100ml以上が病的な多飲を疑う目安
- 変化のスピードが急な場合は特に注意が必要
- 食欲不振、体重減少、元気消失などの他の症状を見逃さない
- 代表的な病気は慢性腎臓病、糖尿病、クッシング症候群
- 避妊していないメスは子宮蓄膿症の可能性も考える
- ストレスが原因の「心因性多飲」もあるが自己判断は禁物
- 異常を感じたら速やかに動物病院で検査を受ける
- 飼い主の判断で水の摂取を制限しては絶対にいけない
- 腎臓病や糖尿病では療法食による食事管理が治療の鍵
- クッシング症候群は投薬治療と副作用の観察が重要
- 日々の健康日誌が愛犬の体調管理に大きく役立つ
- 飲水量の変化は愛犬からの大切な健康のサイン

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参考サイト
よく水を飲む – ペット保険の【FPC】
老犬が水をよく飲む理由は?原因や病気の可能性、対処法を解説 – 和漢みらいのドッグフード
老犬の水を飲む量が多い!?考えられる原因と対策! – ふぁみまる
老犬が水をよく飲むのって病気?よく飲む原因と対処法を解説 – ペットケアステーション大阪
水の飲み過ぎ?老犬が水をよく飲む時は病気が原因かも – Qooppy


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